怪談ホラー実話怪談

レビュー

2026年4月4日

作品ノート

本作は編集部が収集した語り・伝承をもとに再編集した創作怪談です。実在の団体・人物・地名とは関係ありません。

ある怪談イベントの終演後、主催者が来場者向けに実施したWEBアンケートに、こんな感想が送信されてきた。

『とても臨場感がありました。特に最後の演目、演者が語っていた「背後に立つ女」の話は、自分のすぐ後ろに誰かが立って、直接耳元で囁いているような気がして本当に鳥肌が立ちました』

主催者はこの回答を見て首をかしげた。 その日の最後の演目は「トンネルの怪異」であり、「背後に立つ女」などという話は一切していない。過去の公演記録を遡っても、そんな演目は存在しなかった。

不審に思った主催者は、アンケートに入力されていた予約番号からこの回答者を割り出し、当日の座席を特定した。「C列14番」だ。 さらに、当日の会場を定点撮影していたアーカイブ映像を確認する。

最後の演目が始まった時間帯。C列14番に座る客は、微動だにせず、前を向いて熱心に耳を傾けている様子が映っていた。 異常なのは、そのすぐ後ろ、「D列14番」の座席だった。

システム上、そこは当日誰にも売れていない「空席」のはずだった。

だが映像には、D列14番の暗がりから前方のC列14番へ覆いかぶさるように立ち上がり、客の耳元に向かって、終演までずっと何かを囁き続けている「女」の姿がはっきりと映っていた。