ある怪談イベントの終演後、主催者が来場者向けに実施したWEBアンケートに、こんな感想が送信されてきた。
『とても臨場感がありました。特に最後の演目、演者が語っていた「背後に立つ女」の話は、自分のすぐ後ろに誰かが立って、直接耳元で囁いているような気がして本当に鳥肌が立ちました』
主催者は首をかしげた。
その日の最後の演目は「トンネルの怪異」であり、「背後に立つ女」などという話は一切していない。過去の公演記録を遡っても、そんな演目は存在しなかった。
気になった主催者は、アンケートに入力されていた予約番号から回答者を割り出し、当日の座席を特定した。
「C列14番」だ。
さらに、会場を定点撮影していたアーカイブ映像を確認する。
最後の演目が始まった時間帯。C列14番に座る客は、微動だにせず前を向いて耳を傾けていた。
異常なのは、その真後ろ、「D列14番」の座席だった。
システム上、そこは当日誰にも売れていない「空席」のはずだった。
映像には、空席のはずのD列14番から身を乗り出し、前の客の耳元に終演までずっと口を寄せている女の姿が映っていた。