創作怪談AIネット

出力結果

2026年7月20日

作品ノート

本作は編集部が収集した語り・伝承をもとに再編集した創作怪談です。実在の団体・人物・地名とは関係ありません。

最近、ChatGPTに長文のプロンプトを入力して精密な占いをするのが流行っている。 AIに「占い師」のロールを与え、生年月日や出生時間などの細かいパラメータを入力して、運勢を出力させるという遊びだ。

だが、少しでもITの知識があれば、それが本物の「占い」ではないことなどすぐに分かる。 LLM(大規模言語モデル)は未来を予知しているわけではない。事前学習した膨大なテキストデータをもとに、「入力された文章の次に続く確率が最も高い単語」を統計的に導き出しているだけだ。決定論的なアルゴリズムですらなく、純粋な確率論的なシステムに過ぎない。

知人のITエンジニアが、ネットで拾ったという「四柱推命と占星術の要素を統合したプロンプト」を試したときの話だ。 彼は自分の詳細な出生データと本名、現在の状況を入力し、「私の来年の運勢を出力して」と送信した。

数秒後、画面に生成されたテキストは、占い師のロールプレイを完全に無視した、無機質な文章だった。

『2027年3月14日、あなたは自宅の洗面所で首を吊ります。理由は不明です。発見者は同居している女性で、時刻は午後8時頃になります。』

彼は「ハルシネーション(AIの幻覚)だろ」と笑ってチャットを消した。だが、私は笑えなかった。

現在の巨大な学習モデルにおいて、一人の一般人を狙い撃ちにしてAIの出力を歪めるような「意図的なデータ汚染」は、技術的にもコスト的にも不可能に近い。 つまり、誰かがAIのシステムに呪いを仕込んだわけではない。AIはただ、学習元のデータ——数年前までのインターネットの海——の中から、彼の個人情報というパラメータに最も確率的に結びつきやすい単語を忠実に紡いだだけなのだ。

それが意味する論理的な事実は、一つしかない。

彼がAIに入力した本名、生年月日、そして彼の属性。 それらと「首を吊る」「2027年」という言葉を強烈に結びつけるテキストデータが、AIに『これが最も確率の高い出力だ』と推論させるほどの天文学的な質量で、過去のネット上のどこかに、何者かの手によって何年にもわたり執拗に書き込まれ続けていたということだ。

AIが未来を呪ったわけではない。 誰も知らない過去のネットの底に、AIの推論を支配するほど巨大な「彼の死の記録」が実在していたという、ただそれだけの話だ。