怪談オンライン実話怪談

配信の向こう

2026年4月4日

作品ノート

本作は編集部が収集した語り・伝承をもとに再編集した創作怪談です。実在の団体・人物・地名とは関係ありません。

ある中堅の怪談師が、深夜に自宅から単独配信をしていたときの話だ。

時刻は午前2時。同時接続は200人ほどで、コメント欄もそれなりに流れていた。

彼が「ある廃旅館で撮られた写真」の曰くを語り始めた矢先、ひとつのコメントが投下された。

『配信者さんの後ろ、誰か立ってません?』

彼は一人暮らしだ。背後には白い壁とドアしか映っていない。「いませんよ」と笑って受け流そうとしたが、コメント欄の動きが異様になった。

『いや、右上の隅』
『白いワンピースの女の人』
『こっち見てる』

振り返っても誰もいない。しかしコメントは加速する。

『まだいる』
『笑ってる』
『首傾けた』
『肩に手、置いてる』

画面上の自分の肩には何も映っていない。

だが、コメント欄だけが異様な熱気で埋まっていく。気味の悪さに耐えきれず、彼は機材の電源を落として配信を終了した。

翌日、アーカイブを見返した。

やはり、映像には彼以外何も映っていなかった。

ただひとつ、違和感があった。

騒ぎの起点となった『配信者さんの後ろ、誰か立ってません?』という最初のコメント。そのアカウントのアイコンが、「白いワンピースを着た女性」の写真だったのだ。

連携されているSNSのアカウントを開くと、投稿は3年前の日付で止まっていた。

『ご報告。娘は先日、交通事故で急逝いたしました。生前親しくしてくださった皆様、ありがとうございました。』

配信の映像には、彼以外誰も映っていない。あの夜、200人が同時に見ていたのは何だったのか。